導入部
企業と顧客の接点はマーケティング戦略においてとても重要な要素です。顧客との接点を通して、商品やサービスの魅力を直接に伝え、購買欲をかき立てることが可能となります。顧客との接点、つまりタッチポイントを有効に活用できるかどうかは、企業の収益に大きな影響を与えると言っても過言ではありません。それではいかにしてタッチポイントを活用すれば良いのか、実例を交えて解説します。
タッチポイント
1.タッチポイントとは
タッチポイントとは、マーケティングで使われる「顧客接点」を意味する言葉です。企業と顧客が直接、またはさまざまな媒体を通して生まれる接点を指します。例えば、企業と消費者なら接客や広告、企業と企業なら営業などがタッチポイントになります。
かつて企業と消費者のタッチポイントは、店頭での直接接客やテレビCM、折込チラシなどの広告媒体しかありませんでした。しかし近年ではWeb上での接点が急増し、メインコンテンツになりつつあります。オンラインで商品を販売するだけではなく、動画サイトやブログに掲載されている広告バナーなどもタッチポイントとなり得るため、多くの企業がオンラインを前提とした戦略に移行しています。
2.タッチポイントとチャネルの違い
チャネルとは、タッチポイントと同様、マーケティングでは「流入経路」を意味します。チャネルは企業の利益を上げるための媒体、いわゆる店舗や広告そのものを指し、一方タッチポイントは、チャネル(媒体)に対し「顧客が接触した」という行動を重視した言葉になります。
例えば「広告を出した」だけならチャネルですが、ペルソナや外部環境などを考慮し、より多くの接点を生み出す広告を展開することがタッチポイントです。
3.カスタマージャーニーのタッチポイント
カスタマージャーニーとは「顧客の旅」を意味する言葉で、マーケティングの世界においては顧客が製品やサービスと出会い、購入するまでのプロセスを指します。そんな顧客の旅路にも企業と顧客をつなぐ接点が存在しますが、ここで重要なのは、企業が用意したタッチポイント以外でも顧客が商品と接点を持つケースがあるということです。
最もわかりやすい例として「口コミ」があります。口コミは顧客同士の情報交換によって行われるもので、企業が意図しないタッチポイントと言えるでしょう。このようなタッチポイントは非常に多く存在します。その多くは口コミに類するものですが、例えばレビューサイトの投稿記事だったり、SNSで見かけた商品の感想記事だったり、掲示板の書き込みだったり、その多くは実際に購入した顧客が発信したものになります。
タッチポイントの具体例
1.無印良品のWebマーケティング
近年では、顧客が商品の購入を考える時、まずWeb上で商品の情報をチェックすることが当たり前になっています。そこに目を付けたのが無印良品です。無印良品はネット会員に対し、今では珍しくないクーポンの配布をいち早く実装しています。更にスマホのアプリを活用し、商品を購入した場合、口コミを投稿することでマイルがたまるサービスを開始しました。実店舗とWeb上の顧客をつなげ、更に一見無関係な特典を加えることで新たなタッチポイントを生み出した好例と言えます。
2.食品メーカーの「復活選挙」
2011年に行われた日清の「歴代カップヌードル復活総選挙」、2013年に行われたハーゲンダッツの「あのフレーバーをもう一度 “フレーバー復活選挙”」。これらはWeb上やSNSで投票を呼びかけ、廃番になった商品のランキングを作り、上位になった商品を期間限定で復活販売させるという企画です。普段とは違う視点で顧客の興味を引き、企業や商品に対するタッチポイントを増加させた一例です。他にもスナック菓子やガム、カップ焼きそばなど様々な商品に対し同様の企画が実施されていることからも、効果の高さが伺えます。
タッチポイントの強化方法
マーケティング戦略において、タッチポイントの強化は非常に重要です。それでは、どのような手順でタッチポイントを強化していけば良いのでしょうか?
1.自社のブランドイメージを定義する
自社商品をアピールするためには、まずわかりやすいブランドイメージを定義することが大切です。ブランドイメージとは顧客が企業や商品に抱くイメージそのものであり、言い換えれば企業の顔です。いくらタッチポイントを増やしても、顔の見えない企業の商品では顧客の印象に残らず、売り上げにつながりません。最終的に顧客に「〇〇と言えば✖✖だ」と思ってもらえるほどのブランドイメージを持ってもらえるだけで、タッチポイントを増やせます。競合他社とは違う、自社だからこそ押し出せるブランドイメージを定義しましょう。
2.ペルソナの設計
マーケティングにおいてのペルソナとは、自社の顧客になり得る人物像を具体的にイメージしたものです。年齢、性別、住居、家族構成、職業、趣味など様々なカテゴリーを設定することでイメージが明確になり、どのようなタッチポイントを用意するかが判断できます。正確なペルソナを設計できていれば、それだけでマーケティング戦略の方向性が決まるのです。逆に言えば、自社商品に対する適切なペルソナを設計できていなければ効果的なタッチポイントを作り出すことはできません。改めて自社の製品やサービスを見直し、正確なペルソナを設計しましょう。
3.カスタマージャーニーマップの作成
カスタマージャーニーとは顧客が商品を購入するまでのプロセス、「顧客の旅」であることは前にも説明しました。カスタマージャーニーマップとは、そのプロセスをフレームワークで可視化したものです。カスタマージャーニーマップを作成することで、顧客の行動や心理を分析し、効果的なマーケティングを行うことができます。顧客が商品を購入するまでの間に、どのタイミングでタッチポイントが発生するか、どのようなタッチポイントが効果的か、それらを俯瞰的に把握することが可能です。
特徴的なのは、顧客の心理面からも考察を行うことです。単純に顧客の行動だけを追うのではなく、各シチュエーションにおける感情を考慮することで、より的確なタッチポイントを洗い出し、強化することができます。
4.タッチポイントを実行
洗い出したタッチポイントを設定し、実行します。タッチポイントは商品やサービスによって固定されたものではありません。「このジャンルの商品なら、こういうタッチポイントで良いだろう」と安易に考えず、これまでに作り上げたブランドイメージやペルソナなどを重視した「自社の商品」に最も適したタッチポイントを設定しましょう。
無料ツールBoardMixでタッチポイントマップのテンプレートを作成
BoardMixはクラウドを利用し、リアルタイムでの情報共有・共同作業を可能にしたツールです。多彩なテンプレートやアイコンがあり、様々な状況に合わせ効果的な図を作成することができます。BoardMixは基本無料で使用できるため、初めての方でも安心して始めることができます。
・新規のホワイトボードを開きます。
・マップに必要な枠を設定します。
・タッチポイントの内容に合わせてマップを調整します。
・必要な項目を記入します。
以上で、シンプルですがタッチポイントマップのテンプレートが完成します。作成したテンプレートをもとに、タッチポイントを設定していきましょう。
まとめ
一つ一つのタッチポイントを有効に利用できるかは、企業側の対応の一つです。どのような形でも顧客との接点をチャンスと捉え、自社商品やサービスに興味を持ってもらえるような戦略を組み立てましょう。