導入部
プロジェクトを進める際には、常に進捗状況を把握することが重要です。それはプロジェクトリーダーのみならずチームメンバー全体にとっても同様です。しかし漠然と作業をこなしているだけでは、プロジェクト全体の進捗を知ることはできません。そこでプロジェクトの進捗を把握するために役立つ、バーンダウンチャートを解説します。バーンダウンチャートを活用し、プロジェクト管理の効率化をはかりましょう。
バーンダウンチャート
1.バーンダウンチャートとは
バーンダウンチャートは、プロジェクトの進捗をグラフにより可視化したものです。作業量を縦軸、時間を横軸、残りの作業量を折れ線グラフで表します。グラフは3本の線で表示され、それぞれ「実績線」「計画線」「理想線」と呼ばれます。理想線は合計の作業量を施行期間で平均化したもので、計画線は具体的なスケジュールを表したものです。
2.バーンダウンチャートのメリット
バーンダウンチャートを使用する最大のメリットは、プロジェクトの状況を可視化できる点です。計画線と実績線を確認すれば、進捗状況を一目で把握することができるため、プロジェクト管理の大きな助けとなるでしょう。また進捗状況を把握しやすいということは、プロジェクトチーム内での共有も容易になるということに等しいです。プロジェクトマネージャーだけでなくチーム全員が進捗を把握することで、各タスクの担当者がスムーズに自分の業務に取り掛かれます。
3.バーンダウンチャートを使用するシーン
バーンダウンチャートは、特に短期間の作業を繰り返すアジャイル開発に適しています。バーンダウンチャートを作成すれば、残りの作業量とそれを完了させるための時間の把握が容易となり、短期間の作業でも進捗状況を見ながら調整が可能です。
バーンダウンチャートの読み方、作り方
1.バーンダウンチャートの読み方
①計画通りに進行している場合
プロジェクトが予定通りに進行しているかを確認したい場合は、計画線と実績線を見比べられます。計画線と実績線が同じ位置に描かれていることは、予定通りにプロジェクトが進行している証です。予定以上に作業が進んでいる場合は、実績線が計画線だけでなく理想線を下回る場合もあります。
バーンダウンチャートは、あくまでも作業量と時間の把握をするためのものであり、作業内容まで確認するものではありません。例え予定通りに進捗していても、作業の質が伴っていなければ意味がありません。進捗と同時に、作業内容の確認も怠らないようにしましょう。
②中間~後期学習者の場合
バーンダウンチャートの実績線が、中間から後期に掛けて右上に膨らんでいるように描かれている場合、作業者が受動的に作業を行っていると考えられます。
③中間学習者の場合
実績線の中間部分が上方向に膨らんでいるケースは、②よりも効率的に問題の発見と対策を行えたことを示しています。
④早期学習者の場合
実績線が早期(プロジェクト開始直後)に膨らみ、以降緩やかにダウンしている場合、プロジェクト達成のため迅速な対応ができていると考えられます。②、③の場合と比較してより成熟したチームと言えるでしょう。
⑤高原状態の場合
途中までは順調に進捗していながら、後半に失速して高原のように真横の線になってしまう場合、問題が放置されたままになっていることを示しています。この場合、プロジェクト完遂のため、迅速な対応が必要になります。
⑥学習遅延の場合
実績線が終盤になって突然上昇しバーンダウンしないパターンは、プロジェクトの失敗を意味しています。終盤に至って問題が重なり、解決に手間取ってしまったことが読み取れます。
⑦作業増大の場合
実績線が途中で急激に上昇するパターンは、プロジェクトの途中で新たなタスクが追加された場合に発生します。計画段階で必要なタスクを見落としていた可能性があり、計画の見直しを必要とします。
2.バーンダウンチャートの制作手順
①必要な作業時間を設定
プロジェクトを完遂させるために必要な時間を設定します。実際の作業量と経験則を用いて具体的な作業時間を導き出しましょう。例えば5日間で80時間の作業を必要とします。この場合、1日に必要な作業時間が16時間となるため、チャートの横軸(残り時間)は80〜0時間を16時間区切りで設定します。
縦軸の作業量は最大100で、残り時間に照らし合わせた理想線を記入しましょう。
②プロジェクトのスケジュールを組む
タスクごとの仕事量や作業時間、作業人数などを考慮して現実的なスケジュールを組みます。そして組み上げたスケジュールにあわせた計画線をチャートに記入しましょう。
③進捗を把握する
プロジェクトが開始されたら、日々の作業量を確認し進捗を把握します。進捗を把握したらチャートの残り時間にあわせた実績を記入しましょう。実績を線でつなぐと実績線となり、計画線や理想線との比較ができるようになります。
④進捗を共有する
バーンダウンチャートはプロジェクトマネージャーが管理するだけではなく、常にプロジェクトメンバーが誰でも確認できるようにします。チーム全体で進捗を把握することで、プロジェクトの円滑な進行が可能です。
⑤最終分析をする
プロジェクトが完了したら、バーンダウンチャートを分析し問題点を洗い出します。前述したバーンダウンチャートの読み方を参考に、プロジェクト全体を総括しましょう。計画通りに完遂した場合でも、個々のタスクで何らかのトラブルが発生した可能性もあります。次のプロジェクトに活かすためにも、詳細な分析は重要です。
Excelでバーンダウンチャートを作成する
無料でも使用できるExcelを利用し、バーンダウンチャートを作成してみましょう。
・新規のシートを開きます。
・理想、計画、実績を算出し表にします。
・「挿入」の「線グラフ」を選択しチャートを表示します。
・表に実績を入力し、チャート化することで進捗を確認できます。
作成したチャートを共有し、プロジェクト管理に役立てましょう。
バーンダウンチャート作成ツール、おすすめ5選
1.Asana
Asanaは、全世界で利用されているプロジェクト管理ツールです。Google、Asana、Slackを総称してGASといわれる管理手法の概念も生まれています。多くのアプリとの連携が可能です。
2.Trello
Trelloは、プロジェクトの効率化に適したプロジェクト管理ツールです。iOSとAndroidアプリにより、スマホやタブレット端末でも利用可能です。無料プランも用意されています。
3.Backlog
Backlogは、国産ツールの中で高い知名度を誇るプロジェクト管理ツールです。チームのプロジェクト管理に適しています。
4.Redmine
Redmineは、オープンソースのため無料で利用できます。インストールする必要はありますが、さまざまな管理手法に活用できます。
5.Boardmix
BoardMixはクラウドを利用し、リアルタイムでの情報共有・共同作業を可能にしたツールです。多彩なテンプレートやアイコンがあり、様々な状況に合わせ効果的な図を作成することができます。BoardMixは基本無料で使用できるため、初めての方でも安心して始めることができます。
まとめ
バーンダウンチャートはシンプルなグラフゆえに進捗を把握しやすく、慣れれば作成も容易です。不測の事態が発生しかねませんが、プロジェクトメンバーが同様に進捗を把握していれば、トラブルによる遅延も最小限に抑えることができるでしょう。バーンダウンチャートを活用し、円滑なプロジェクトの進行を目指してください。