導入部

映像作品などを制作する場合、携わる人数が多ければ多いほどイメージを統一することが難しくなります。また、人数が多いということはそれだけ大規模の作品を意味しており、イメージを統一させる必要性がより一層高まるとも言えます。今回はクオリティの高い作品を完成させるために有用なストーリーボードを解説しましょう。ストーリーボードとは何ですか?どのように活用すれば良いですか?今回は、作図ツールを用いて説明します。

ストーリーボード-1

ストーリーボード

1.ストーリーボードとは

ストーリーボードとは、映像作品の完成図であり、道しるべでもあります。映像作品の制作に着手する前に、プロットごとの情景や構図などを書き表したものがストーリーボードです。「セリフの無いマンガのような物」ととらえればわかりやすいでしょう。ストーリーボードはハリウッドなど海外の映画でもよく利用されている手法で、映像作品を制作するには欠かせないものとも言えます。

2.ストーリーボードと絵コンテの違い

絵コンテという言葉を聞いたことがあるでしょうか?日本の映像業界では、ストーリーボードよりも有名かもしれません。絵コンテはストーリーボードと同様に映像作品を制作する前に、イメージをイラストで表したものです。1カットずつ表現したい場面やセリフ、演技構成などを書き示し、出演者や制作者と共有します。

こうして書くと、ストーリーボードと同じように感じるかもしれません。しかしストーリーボードは、絵コンテで記載した情報に加え、カメラワークなど更に詳細な情報を挿入していきます。簡単に言えば、作品に関して絵コンテよりも更に詳しく説明しているのがストーリーボードです。絵コンテよりも情報量が増えるため、当然作り上げるのに時間を要します。その一方、絵コンテに比べ、メリットも多くあります。

3.ストーリーボードのメリット

ストーリーボードを利用することで、下記のようなメリットを得ることができます。

・プロジェクトメンバー内で、より正確な完成図を共有できる。

ストーリーボードは、絵コンテよりも作品の詳細な情報が含まれています。そのため、ストーリーボードを活用すれば、メンバー間でイメージのそごを防ぐことができ、完成図により近い作品を作り出すことができます。また、万が一誰かが認識を誤った場合でも、プロット担当以外のメンバーでもそれを指摘することが可能となるのです。

・客観的な評価が可能になる。

ストーリーボードは映像のイメージを可視化することで、ユーザーの視点で作品を見ることができます。特に物語のプロットやポイントなどを客観視して、撮影前に見直しや修正ができます。繰り返し調整することができれば、作品の品質向上にもつながります。

・プロジェクトを円滑に進めることができる。

ストーリーボードで映像を正確に共有でき、客観視することで撮影前の修正を行うことができれば、その後のプロジェクトをスムーズに進行させることができます。したがって、それだけ経費を削減することができ、更に時間に余裕を持つようになり、高水準な撮影を行うこともできます。例えストーリーボードの作成に時間がかかっても、プロジェクト全体から見ればメリットも多く、作品のクオリティを考えれば率先して活用していくのも良いのではないでしょうか。

4.ストーリーボードとUXデザイン

UX(ユーザーエクスペリエンス)デザインとは、製品やサービスの利用を通じてユーザーの顧客体験を設計することです。ストーリーボードは、映像作品だけではなくUXデザインを検討する際にも役立ちます。

ストーリーボードの書き方

ストーリーボードは前述のように、UXデザインの検討などにも役立ちます。ではその活用方法を説明しましょう。

1.現状の問題を洗い出す。

ストーリーボードでは、現状で問題を抱えているユーザーが商品やサービスを利用することで、どのように問題を解決していくのかをストーリーの形で描いていきます。そのため、まず物語のスタートである「問題」を洗い出し、ストーリーに設定します。予めコンセプトを決め、実際にユーザーから意見を収集できていれば、より具体的なスタートを設定できるでしょう。

2.ストーリーのエンディングである、「問題の解決」を設定する。

ストーリーのスタートが決まったら、次は問題の解決、つまりストーリーボードのゴールを設定します。この場合、ただ問題を解決したというだけではなく、ユーザーにとって満足した結果になっているかを考えてみましょう。物語には様々なエンディングがありますが、ユーザーにとってのハッピーエンドとは何ですか?様々な側面から考察し、ユーザーの求めるゴールを設定します。

3.問題解決までのプロセスを構築する

先に設定した問題から解決までの具体的なプロセスを構築します。具体的な解決策がなければ、ユーザーをゴールまで導くことはできません。まずはできるだけ多く、解決策につながるアイデアを出し合いましょう。その上で有益な解決策を導き出し、プロセスを作り上げることが重要となります。

4.設定した構成をテキスト化する

1〜3までに作り上げた構成を、ストーリーボードの形式に当てはめます。コマごとに必要な情報をテキスト化し、ストーリーを作り上げていきます。コマ数に決まりはありませんが、問題を解決するまでのプロセスがユーザー視点で把握できるよう、適切にまとめられているかを意識しましょう。

5.テキストをイラストで表現する

最後にテキストで構成した情報をイラストにします。イラストはわかりやすさを重視し、補足としてナレーションなどを加えると、読んだ人はより把握しやすくなり、メンバー内で正確な情報共有を行えます。作成後は内容を繰り返し確認し、修正を行うことで精度の高いストーリーボードを作り上げましょう。

BoardMixでストーリーボードテンプレートを作成

BoardMixはクラウドを利用し、リアルタイムでの情報共有・共同作業を可能にしたツールです。多彩なテンプレートやアイコンがあり、様々な状況に合わせ、効果的な図を作成することができ、ストーリーボードの作成にも適しています。BoardMixは基本無料で使用できるため、初めての方でも安心して始めることができます。

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https://boardmix.com/

・新規のホワイトボードを開きます。

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・適したアイコンかテンプレートを選択します。

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・製図を行い、コマを仕上げます。

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・作成したコマをコピーして必要な数をペーストします。

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ストーリーボードを作成するコツ

精度の高いストーリーボードを作成するには、ストーリーをより具体的に把握することが必要になります。そのため、「6W1H」を意識しながら構成を練り上げることが重要です。

6W1Hとは7種類の疑問詞、WHAT(何を)、WHY(なぜ)、WHO(誰が)、WHERE(どこで)、WHEN(いつ)、WHOM(誰に)、HOW(どうやって)の頭文字を取ったもので、ビジネスシーンでも報告書や論文を作成する際に活用されます。

6W1Hを用いることでストーリーの構成の具体性を高め、より完成度の高いストーリーボードを目指しましょう。

まとめ

ストーリーボードは絵コンテをより詳細に描画した台本やシナリオのようなもので、人によっては難しくとらえられるかもしれません。しかしストーリーボードを作成することで、チーム内の情報共有だけでなく作者の立場からも作品を多角的に見直すことができます。ストーリーボードを、より良い作品を作るのに活かしてみてはいかがでしょうか。