導入部
ビジネスにおいて、文書により情報を伝えるケースは珍しくありません。業務によっては膨大な情報量になることもあるでしょう。そして情報量が多ければ多いほど正確な伝達は難しくなり、受け取る側の時間や労力を消費します。そこで重要となるのがエグゼクティブサマリーです。エグゼクティブサマリーを理解し内容を吟味することで、必要な情報を正確かつ円滑に伝えることが可能となります。
エグゼクティブサマリーとは
エグゼクティブサマリー(Executive Summury)とは、主に企業の事業計画書の要約を意味します。事業計画書の冒頭に掲載するものを見れば、計画書の内容を大まかに把握することができます。その上で計画書を読み進めることで、計画書の理解を深めることができます。実際には計画書のみではなく、多くの書類の要約としても活用されています。
エグゼクティブサマリーのメリット
練り上げられたエグゼクティブサマリーは、報告を受ける側にとって内容を理解しやすくなるだけではなく、時間などのコストを軽減する効果があります。極論すれば、計画書や報告書を細部まで読み込まなくても、エグゼクティブサマリーさえ読めばプロジェクトの全体像や重要なタスクを押さえることができます。エグゼクティブサマリーは読み手にとって非常に重要でメリットの大きい手法と言えます。
またエグゼクティブサマリーはコミュニケーションの場合を限定せずに活用することが可能で、以下のように、さまざまなケースで運用することができます。
・事業計画書
・プロジェクト提案書
・プレゼンテーション
・市場調査書
・アンケート纏め
エグゼクティブサマリーの書き方
1.エグゼクティブサマリーの様式
エグゼクティブサマリーを書き始める場合、特に「こうしなければならない」といったルールはありません。しかし、エグゼクティブサマリーは報告内容をわかりやすく要約するのが目的であるため、まず必要以上の長文にならないように注意しましょう。掲載位置としては、その使用目的によれば、目次の次、つまり本文の先頭に配置するのが一般的です。
2.エグゼクティブサマリーを構成する項目
エグゼクティブサマリーを作成する場合、以下のような項目で構成します。全てを網羅する必要はなく、プロジェクト内容などを押さえて必要な項目を選択し、わかりやすい文章を構成しましょう。
①タイトル
エグゼクティブサマリーは、計画書や報告書を受け手に理解してもらう目的があります。中には相手に対して訴えたいこともあるでしょう。しかし受け手にとって印象が薄ければ、いくら訴えても受け入れられない可能性があります。そこで文書の内容を短文で言い表したインパクトのあるタイトルを用いてみましょう。まず人目を引き、記憶に残り、その上でタイトルからおおよその内容が思い浮かぶようなら、受け手にとっても強く印象に残るでしょう。エグゼクティブサマリーが文章を要約したものなら、そのエグゼクティブサマリーを更に要約したような、わかりやすいタイトルを付けることも大切です。
②目的
報告者がなぜ今回の文書を作成したのか、どんな目的で、何を訴えたくて、受け手に何を求めているのかを明確にします。この点が不明瞭だと、いかに優れた計画書を作成しても受け手はどう判断して良いのかわかりません。リザルトの報告なのか、または新たな提案や陳述なのか、受け手に何を意識して報告書を読んで欲しいのかをハッキリさせておきましょう。
③概要
文書の概要を説明することは、エグゼクティブサマリーの大事なポイントです。プロジェクトなどの概要をわかりやすく伝えることができれば、その後の報告も理解されやすく、文書の内容を無駄なく伝達することが可能となります。5W1Hを用いるなど、より具体性を重視した表現を心がけましょう。
④ニーズ
プロジェクトなどを行う場合、それなりのニーズがあります。アナタの打ち出した計画や提案がそもそも誰に必要とされ、求められているのか。それを求めているのが会社なのかユーザーなのかなど、より具体的な提示をすることで、文書の価値が変わると言っても過言ではありません。特にビジネスの場では、ユーザーのニーズに応えられるか否かが企業全体の評価にも大きく影響します。
⑤メリット
企業として、プロジェクトを行うメリットについて説明します。自社が行うメリットや、それを達成するメリットを具体的に提示できれば受け手の印象も大きく変わります。特に「自社だからこそのメリット」を強調すると良いでしょう。
⑥市場(外部環境)
企業のプロジェクトは自社の状況だけでなく、様々な外部要因の影響を受けます。政治的な視点や経済的な視点から、提案の必要性や重要性を説明します。
⑦マーケティング
実際に計画や提案などが始まった場合、ユーザーに対してどうアプローチしていくかを説明します。具体的な実例などを挙げることで説得力を強め、計画内容の価値を高めることができます。
⑧アクションプラン
アクションプランとは、「行動計画」を意味します。提案したプロジェクトを達成するための具体的なプロセスだと定義できます。いつ、誰が、何を、どのように行うかを明確にし、実現性の高さを強調します。どれほど理想的でメリットのある提案でも、達成できなければ意味がありません。そのために、目標達成までの道筋を具体的に提示できるかどうかは大きな影響があります。エグゼクティブサマリーでは、プロジェクトの全体像が把握できるようなプランを図で表し、実例などを交えて説明すると簡潔かつ説得力のある提案を行うことができます。フレームワークを活用しても良いでしょう。
3.エグゼクティブサマリーの事例
実例として、2022年に経済産業省が公表しているエグゼクティブサマリーを紹介します。
・事業再編実務指針 ~事業ポートフォリオと組織の変革に向けて~ (事業再編ガイドライン)
https://www.meti.go.jp/press/2020/07/20200731003/20200731003-4.pdf
このエグゼクティブサマリーは、109ページに及ぶ本稿を16ページにまとめたもので、タイトルを除くと以下の5つの項目で構成されています。
1:はじめに
2:経営陣における課題と対応の方向性
3:取締役会・社外取締役における課題と対応の方向性
4:投資家との対話や情報開示における課題と対応の方向性
5:実行段階における実務上の工夫
本稿と見比べると、何をどのようにまとめているかがわかります。ぜひ参考にしてみてください。
BoardMixでエグゼクティブサマリーのテンプレートを作成
BoardMixはクラウドを利用し、リアルタイムでの情報共有・共同作業を可能にしたツールです。多彩なテンプレートやアイコンがあり、様々な状況に合わせ効果的な図を作成することができ、エグゼクティブサマリーの作成にも適しています。BoardMixは基本無料で使用できるため、初めての方でも安心して始めることができます。
・新規のホワイトボードを開きます。
・ベースとなるフレームを選択します。
・アイコンやラインを使用し、枠や項目を記入します。
まとめ
エグゼクティブサマリーは物語の冒頭や目次に当たります。物語であればネタバレはご法度ですが、報告書であれば話は別です。冒頭で情報の全容が把握できれば、後述される内容もスムーズに理解できます。エグゼクティブサマリーを作成するということは、膨大な情報を簡潔にまとめるということであり、そのスキルはプレゼンなどでも活かすことができるでしょう。情報伝達能力向上にもつながるエグゼクティブサマリーを、ぜひ活用してみてください。