ある参加者は「前回の設定を残してほしい」と言い、別の参加者は「毎回リセットしてほしい」と言う。どちらの要望を採用するか決める前に、同じ条件で同じ作業をしているのかを確かめましょう。ユーザーインタビューで結果が矛盾して見えるとき、その背景には異なるニーズ、記録されていない状況、まだ答えの出ていない問いがあるかもしれません。
証拠を並べた「エビデンスウォール」を作ると、こうした違いをチームで検討できます。Boardmixの共同編集できるオンラインホワイトボードに、元の発言や観察メモと複数の解釈を並べ、どんな追加観察があれば解釈を見分けられるか考えます。目標は全員の意見を一致させることではなく、証拠の範囲を超えた結論を避けることです。

テーマを増やすより、証拠を比較したほうがよい場面
親和図は、関連する観察をグループにまとめます。一方、矛盾を検討するエビデンスウォールは、1つの争点に焦点を当てます。どの証拠がそれぞれの解釈を支え、どの証拠がそれを疑わせ、どんな状況が不明なのかを確認するためのものです。「ユーザーはもっと自由に操作したい」といった広いテーマに相反する要望が埋もれているときや、印象的な一言だけで機能の実装が決まりそうなときに役立ちます。
調査全体を別のボードに移す必要はありません。関連するメモだけを集め、元の識別番号を残します。作業の成果は、現時点で言える範囲を明示した見解と、次に行う具体的な確認です。付箋の多い側を勝者にする投票ではありません。
1. 先に答えを決めず、食い違いを言葉にする
企業向けレポートアプリを調査する架空の例で考えます。チームは、レポートのフィルターを保持すべきか検討しています。「フィルターを常に記憶すべきか」という問いは、すでに特定の実装を前提にしています。次のように問い直すと比較しやすくなります。フィルターの再利用はどんな作業で役立ち、どんなときに次の作業へ誤った条件を持ち込むのか。
証拠の上にこの問いを置き、その下に比較する2つの見方を書きます。
- 前回のフィルターを再利用すると、日常的なレポート作成を繰り返しやすくなる。
- フィルターが空の状態から始めると、別のレポートに関係のない条件を持ち込まずに済む。
この2つは両立し得ます。自動保持、保存済み設定、前回の条件を再利用する操作といった解決案は、別の場所に置きましょう。好みの画面設計についての議論が、必要な支援を理解するための議論に置き換わらないようにします。
2. 発言や観察の条件がわかるカードを作る
1枚のカードには1つの発言または観察、参加者コード、出典、今回の問いに関係する条件を記録します。権限のあるメンバーが参照できる録画の時刻や、調査メモの具体的な位置を示してください。広く共有するボードに、不要な個人情報や誰でも開ける録画リンクを載せないようにします。
本人が話したことと、研究者が観察した行動は区別します。GOV.UKの調査セッション分析ガイド(英語)も、見聞きした内容と、その意味についての解釈を分けて記録するよう勧めています。解釈に合わせて証拠を書き換えるのではなく、元のカードの隣に解釈を置きましょう。
以下は3人から得た6件の証拠であり、6人分の独立した回答ではありません。調査対象は別のレポートアプリです。ここで扱うフィルターの挙動は、Boardmixの機能ではありません。
| カードと出典 | 証拠 | 関係する条件 |
|---|---|---|
| E01・P01・セッションA、08:40 | 発言:「昨日の条件を残してほしい。毎朝、同じ確認をするので」 | 経理補助担当。1つの会社で、仕入先に関する定例レポートを作成。 |
| E02・P01・セッションA、09:10 | 観察:セッション中に見せた前のレポートと同じ仕入先・請求書ステータスを再入力する。 | 同じ会社、同じ作業。手入力を繰り返している。 |
| E03・P02・セッションB、12:05 | 発言:「毎回まっさらな状態にしてほしい。前の顧客の条件はいらない」 | コンサルタント。複数の顧客企業を切り替えて作業。 |
| E04・P02・セッションB、13:20 | 観察:会社を切り替えた後、会社名を確認して仕入先フィルターを消す。 | 会社が変わっているが、前の仕入先の条件が表示されたまま。 |
| E05・P03・セッションC、06:30 | 発言:「月曜日には日付が残っていました」 | 経理補助担当が過去の操作を回想。タブの状態とアプリのバージョンは不明。 |
| E06・P03・セッションC、08:00 | 観察:新しいタブでレポートを開くと、日付欄が空になっている。 | 今回のセッション。アプリのバージョンは2.4。同じ会社。 |
断定的に聞こえる発言も、そのまま残します。E03では「毎回」と言っていますが、その理由は別の顧客の設定にあります。この違いは文脈を確認する手がかりであって、本人の言葉を黙って自分の解釈に置き換える理由にはなりません。
3. 矛盾と判断する前に条件を比較する
関連するカードを並べ、作業、役割、会社やアカウント、製品の状態、証拠の種類を見比べます。「意見が分かれた」という大きなくくりより、各組み合わせの横に短い注記を付けるほうが検討しやすくなります。
文脈が異なる組み合わせ:E01/E02とE03/E04
P01は1つの会社のレポートを繰り返し作成しています。P02は会社を切り替え、前の顧客の条件が残ることを気にしています。どちらかが正しく、もう一方が間違っているとは言えません。同じ作業の繰り返しと、文脈の切り替えとの境界が重要なのかもしれません。
解釈は「同じ会社での繰り返し作業ではフィルターの再利用が役立つ可能性がある。一方、会社を変える際は、リセットされたことがわかる表示か、明示的な選択が必要かもしれない」と記録します。提案する操作を調べるまでは、可能性として扱いましょう。ニーズを示す2つの記録だけでは、どの画面設計がそれを満たすかまではわかりません。
条件が不足している組み合わせ:E05とE06
月曜日の記憶と、新しいタブで観察した挙動は、まだ同条件での比較ではありません。以前のバージョン、タブの状態、正確なレポートが不明です。「未解決:以前の条件が不明」と記し、「アプリがランダムにフィルターを忘れる」と断定しないでください。
同じアカウント、レポート、バージョン、開始状態、操作手順で異なる結果が出たのであれば、両方を残して不一致を調べます。他のカードの大半が別の説明を支持していても、この観察を消す理由にはなりません。
同じ言葉が別の意味で使われている場合
「リセット」「保存された」「同じレポート」が何を指すかも確認します。仕入先は残してほしいが、日付の範囲は変わってほしいのかもしれません。具体的な項目を指してもらうか、直近の操作をたどってもらいましょう。曖昧な一文から新しいユーザー層を作るより、短い追加確認が役立つことがあります。
4. Boardmixに証拠の比較ボードを作る
Boardmixのワークスペースを開き、空のボードに「問い」「証拠の組み合わせ」「考えられる解釈」「次に確認すること」という4つのフレームを作ります。これらは自分で付ける見出しであり、専用の調査分析モードではありません。
- 「問い」に判断したい範囲を書く。フィルターに関する問いと、比較する2つの見方を置きます。それぞれが役立つ条件を書き足せる余白を残します。
- 証拠1件につき付箋を1枚作る。先頭にE01〜E06と参加者コードを付け、短い発言または観察、出典を記します。長い背景説明は隣のテキストに分けます。
- 比較する組み合わせを手動で並べる。E01/E02とE03/E04を向かい合わせに置き、「同じ会社」「会社を切り替え」と明記します。E05/E06は、未解決の別の組み合わせとして下に置きます。条件を確かめる前に、すべてを賛成・反対に分類しないようにします。
- 証拠と解釈をつなぐ。接続線と「支持する」「適用範囲を限定する」「文脈が不足」といった文字を使います。E01とE02は繰り返し作業、E03とE04は文脈の切り替えに関する解釈へつなぎます。E05/E06は、不明な条件についての問いにつないだままにします。
- 小さな確認事項の表を追加する。未回答の問い、必要な観察、担当者、見直すタイミングを記します。手動で更新する調査メモであり、自動の担当割り当てやリマインダーではありません。
- 出典の確認を依頼する。共有前にアクセス範囲を確認します。セッションに参加した同僚に、カードが実際の内容を正しく表しているかコメントしてもらいましょう。解釈への異論は該当する解釈の横に残し、元の発言は変更しません。

色だけでなく文字も使います。青い付箋だから観察だと判断させるのではなく、種類を書いてください。混み合ってきたら、争点となる組み合わせを中心に置き、詳しい出典一覧は脇にまとめます。色や線の意味を推測しなくても、主張から証拠までたどれる状態が大切です。
5. 解釈が変わり得る追加確認を選ぶ
「もっとインタビューをする」だけでは、食い違いは解決しません。何を観察し、どのような結果なら説明を見直すのかを書き出します。
| 未回答の問い | 次の確認 | 結果から検討できること |
|---|---|---|
| 重要な境界は、同じ作業の繰り返しと会社の切り替えにあるのか。 | 本人の実務に両方が含まれる場合、通常のレポート作成と、別の会社のレポート作成を実演してもらう。どの項目を保持・消去したいか観察する。 | 作業によって期待が違えば、文脈に応じた設計を支持する材料になる。期待が同じなら、その説明を再検討する。 |
| P03はなぜ日付が残ったと記憶しているのに、今回は空欄になったのか。 | 可能なら以前の条件を確認する。そのうえで、アカウント、会社、レポート、バージョンをそろえ、既存のタブで開き直す場合と新しいタブで開く場合を比較する。 | 再現する差があれば、タブやセッションの状態に調査を絞れる。再現しなくても記憶が誤りとは断定せず、原因は未解決とする。 |
この例では、調査担当のマヤが次回のセッションまでに最初の確認用の2つの課題を準備します。2つ目はエンジニアのレオが再現手順を記録し、マヤと確認します。担当を決めると次の作業は具体的になりますが、現在の解釈の確かさが増すわけではありません。
「もっと賢いフィルターがほしいですか」とは聞かないようにします。解決案を先に示すと、同意しやすい質問になります。何をしたのか、何が残ると思ったのか、レポートを使う前に何を確認したのかを見せてもらいましょう。
製品の議論に持ち込む見解
ここまで整理すると、次のように範囲を絞った見解を示せます。
今回の調査では、同じ会社でレポートを繰り返し作る場合と、顧客企業を切り替える場合で、フィルターの再利用に対する期待が異なった。現在の会社内で条件を明示的に再利用できる方法を検討し、会社の切り替えがわかるようにする。P03の日付欄の挙動については、原因がまだわかっていない。
これはすべての項目を保持する提案ではなく、すべての経理補助担当者やコンサルタントが同じ行動を取るという証拠でもありません。E01〜E06と、予定した2つの確認を、この見解に結び付けて残します。確認前に設計を決める必要があるなら、どの不確実性を受け入れるのかを記録し、後から見直せる変更を選びます。
次回のレビューでは、まず争点となった組み合わせを開きましょう。新しい観察を隣に加え、根拠がある場合にだけ解釈を修正します。役に立つエビデンスウォールには、自分たちの考えを変える結果を置く余白があります。