プロジェクトのキックオフは、参加者が予定を共有するだけで終わらせたくないものです。オンラインホワイトボードを使い、目標を簡潔なプロジェクト概要にまとめましょう。目指す成果、最初の段階で取り組むことと取り組まないこと、重要な判断を誰が担うか、未確認の仮説、そして最初に着手することを整理します。合意した内容と、まだ答えの出ていない問いを一緒に残すことで、会議後も使えるボードになります。

離れた場所で働くチームなら、共同編集できるオンラインホワイトボードを使うと、全員が同じプロジェクト概要を見ながら意見を加えられます。会議中に詳細な計画をすべて完成させる必要はありません。意見の違いを隠したり、未確定のことを確定事項にしたりせず、計画を立て始められる状態をつくることが目的です。

目指す成果から対象範囲、意思決定の責任者、仮説、依存関係、最初のマイルストーンへつなぐキックオフボード
キックオフボードには、チームが着手するために必要な決定事項と未解決の問いを残します。

ボードに何を残すかを決める

付箋を並べる前に、会議後に残したい内容を決めます。使いやすいキックオフボードには、次の問いへの答えが簡潔にまとまっています。

  • なぜこのプロジェクトを始めるのか。 解決したいユーザーや事業の課題を、分かりやすい言葉で書きます。
  • どのような成果を目指すのか。 作業の一覧ではなく、実現したい変化を示します。
  • 最初の段階で何を扱うのか。 関連する仕事がいつの間にか増えないよう、対象範囲を明確にします。
  • 誰が判断し、誰が協力するのか。 意思決定の責任者と、必要な専門知識を提供する人を記します。
  • まだ分かっていないことは何か。 仮説、依存関係、未解決の問いを分けて整理します。
  • 次に何をするのか。 最初のマイルストーン、担当者、完了と判断する条件を記録します。

これらはプロジェクト概要の項目であり、会議のアジェンダではありません。進行役は別の予定表で時間を管理し、ボードにはプロジェクトを進めるうえでの合意事項を残します。

答えを決めつけずにボードを準備する

Boardmixのホワイトボードを開き、概要の各項目に見出しを付けたエリアを用意します。エリアには短いテキスト見出しを置き、意見は一つずつ付箋に書きます。そうすれば、ほかの記述を書き直さずに提案を移動できます。目指す成果の隣に対象範囲を置き、その下に仮説と依存関係を並べ、最後のエリアに最初のマイルストーンを記します。これはボードの配置例であり、あらかじめ読み込まれる完成済みボードではありません。

各項目をフレームに分け、事前には分かっていることだけを記入します。たとえば、プロジェクトを依頼した責任者の要望、確認済みの制約、決まっている場合の目標日、判断に参加する人や情報を提供する人です。不確かな項目は問いとして書きます。先に答えを埋めておくと、効率よく進んだように見えても、実はチームが合意していなかったということが起こります。

会議前に、成果に影響しそうな懸念、制約、依存関係を一人一つ付箋に書いてもらいます。その時点では解決策まで書かないように伝えましょう。発言を控えがちな人も議論の前に情報を出せますし、進行役も前提の食い違いを把握しやすくなります。

ひな形から始めたい場合は、プロジェクトのキックオフミーティング用テンプレート(英語)を利用できます。以下では、特定のプロジェクトを想定したボードの記入例を紹介します。

共有するプロジェクト概要に沿って会議を進める

  1. 最初に目指す成果を書く。 プロジェクトを依頼した責任者やリーダーに、「このプロジェクトが成功したと言えるのは、……になったとき」という文を完成させてもらいます。ユーザーやチームに生じる、確認できる変化を示しましょう。異なる成果が挙がったら、意思決定の責任者が整理するまで両方を残します。
  2. 最初の段階の範囲を区切る。 「対象に含めること」と「対象に含めないこと」を並べます。最初の成果を得るために欠かせないものを確認し、関連していても今回は見送る要望を明記します。追加したくなった案は、合意済みの作業に混ぜず、後で検討するエリアに置きます。
  3. 事実と仮説を分ける。 各自が黙って書く時間を短く設けてから、付箋をまとめます。確認済みの事実、仮説、未解決の問いを区別しましょう。計画を左右しそうな仮説には、誰が検証するか、どの情報があれば判断できるかを書き添えます。
  4. 判断する人を明確にする。 重要な選択ごとに、最終的な判断を担う責任者を一人決め、根拠や専門知識を提供する人も記します。意見が割れたときの決め方が分からなければ、「チームで決める」だけでは役割が明確とは言えません。
  5. 全作業ではなく依存関係を整理する。 最初のマイルストーンに進む前に必要な作業や承認だけを書きます。引き継ぎを担う人と、その人が受け取る必要のあるものを示しましょう。細かな作業分解や見積もりは、範囲と依存関係を共有してから行えます。
  6. 最初のマイルストーンを決める。 次の計画段階へ進むために、まず何が確認できればよいかを考えます。小さくても観察できる成果を選び、担当者、設定できる場合は期限、完了を示す根拠を記録します。
  7. 概要を読み合わせる。 目指す成果、対象範囲、意思決定の責任者、未解決の問い、依存関係、最初のマイルストーンをまとめて確認します。全員が同じボードを見ているうちに、誤りや不足を修正してもらいます。

会議で意見の違いが見つかったら、合意できたことにしてしまわないようにします。それぞれの意見、判断できる人、次に必要な根拠や話し合いを残しましょう。担当者が付いた未解決の問いは、「後で確認」とだけ書かれた付箋よりも次の行動につながります。

記入例:初回のワークスペース設定を改善する

以下は説明のための架空の例であり、顧客の実績ではありません。プロダクトチームが、新しいワークスペース管理者の初回利用を改善するよう依頼されたとします。キックオフボードには、次のように記入できます。

ボードの項目記入例
目指す成果新しい管理者が、ワークスペースの初期設定を理解できるようにする。
対象に含めることワークスペースの作成から、最初のメンバーを招待するまでの手順。
対象に含めないこと請求・支払いに関する変更と、製品ナビゲーション全体の見直し。
意思決定の責任者プロダクト責任者が最初の段階の範囲を決める。デザインと開発の担当者は、使いやすさと実現可能性について助言する。
検証する仮説新しい管理者は、対面やオンラインで操作説明を受けなくても初期設定を完了できる。
依存関係管理者がメンバーを招待する際に、どのアカウント権限が適用されるかを確認する。
最初のマイルストーンUXリサーチャーが木曜15:00までに、現在の初期設定フローを図にする。各手順、必要な権限、未解決の問いを図に示し、その後でチームが変更案を選ぶ。
未解決の問い初期設定のどの手順が最も分かりにくいか。UXリサーチャーが最近のサポート対応を確認し、次のユーザー調査で尋ねる質問を提案する。

この概要では、ユーザーがどこで困っているかを最初から分かっているとは扱いません。まず調べる範囲と意思決定の責任者を明確にし、請求・支払いやナビゲーションに関する要望が最初の段階に紛れ込むのを防ぎます。現在の設定フローと必要な根拠を把握してから、計画に作業や日程を加えていきます。

初回設定を改善する架空のプロジェクトのキックオフボード。成果、対象範囲、意思決定の責任者、仮説、依存関係、最初のマイルストーン、未解決の問いを整理
初回設定を改善するプロジェクトでは、対象範囲と最初のマイルストーンを一緒に確認できるようにします。

意見の違いを担当者のいる次の行動につなげる

キックオフでは、その場で解決できない違いが明らかになることもあります。ボードを使い、議事メモに埋もれさせずに残します。

  • 目指す成果が曖昧な場合:候補を並べたまま、プロジェクトを依頼した責任者に選択や修正を求めます。会議中に決められなければ、判断する日を記録します。
  • 二つの部門で範囲への意見が異なる場合:各案とその影響を書きます。どちらを優先するかを責任者が判断できる形にし、両方を引き受けるような曖昧な表現にまとめないようにします。
  • 依存する作業の担当者が不明な場合:確認できるチームや人を明記し、次の連絡先や判断のタイミングを残します。
  • 重要な関係者が欠席している場合:どの判断にその人の意見が必要か、回答を得る前に作業を進めてよいかを記します。
  • 新しい要望が次々に出る場合:後の段階で検討するエリアへ移し、誰が見直すかを書きます。有用な案を捨てずに、最初の対象範囲を守れます。

色だけでなく文字のラベルも使い、グレースケール表示や色の見え方が異なる人にも伝わるようにします。決定事項は、その発端となった問いの隣に残し、承認済みの決定と、まだ承認が必要な提案を区別しましょう。

会議後も次の行動に使える概要にする

完成したボードを、次の作業を担当する人たちに共有します。合意した行動だけを担当者のいる仕事にし、未確認の仮説には根拠が得られるまでその旨を残します。範囲や判断が変わったら概要を更新し、変更内容も記録しましょう。後から読む人が、計画が変わった理由を理解できます。