ユーザーも運用側も、システムに触れれるほど新たなアイデアが生まれます。そのため、実装や検証を繰り返し、初期の要件に変更を加えていくのが一般的なスタイルになっています。つまり、急な変更や柔軟性の高いアジャイル開発が求められるのです。
そこで、本記事ではアジャイル開発の手法の一つとして、ユーザーストーリーをご紹介します。ユーザーストーリーを活用し、適切な開発を進めて行きましょう。
1. ユーザーストーリーとは
ユーザーストーリーとは、プロダクトを実際に利用するエンドユーザーに何を提供するのか、そしてその目的は何かを簡潔に書く要件定義の方法の1つです。
目的や実現する価値を明らかにするために「〇〇(ユーザー)として、✕✕(行動)をしたい。それは、▲▲(目的)だからだ」の形式で表現すると書きやすくなります。
1.1 ユーザーストーリーマップとは
このユーザーストーリーを時系列に、優先順位順に配置したものがユーザーストーリーマップです。
エンドユーザーの行動とプロダクトに求める価値を時系列で整理し、それを実現するために必要な機能や要件をマッピングすることで、プロダクトの開発にかかわるすべてのメンバーが実現する価値の目的や優先順位を視覚的に捉えられるようになります。
1.2 ユーザーストーリーマップとカスタマージャーニーマップの違い
ユーザーストーリーマップと同じように、ユーザーの行動を視覚化する手法として、「カスタマージャーニーマップ」もあります。
カスタマージャーニーマップは、ユーザーの行動や思考・感情などを時系列に整理したもので、ユーザーの動きを分析しながら適切なアプローチをするために作成するものです。実際に製品やサービスを利用する顧客をカスタマーとして設定し、性別や年齢、趣味、行動、生活スタイル、思考などを細かく洗い出しながら実施します。
カスタマージャーニーマップとユーザーストーリーマップは似ている部分もありますが、カスタマージャーニーマップではユーザーの行動を想像・トレースしたうえでプロダクトのタッチポイントを洗い出すのに対して、ユーザーストーリーマップではユーザーに提供すべきプロダクトの価値や開発の優先順位を整理するために使われるところが異なります。
そのため、ユーザーストーリーマッピングは開発の初期要件を整理する際に作成し、それをもとに基本設計やワイヤーフレームを作成するケースが多いでしょう。
2. ユーザーストーリーマッピングの目的
2.1 本当に必要な機能や要件を判断する
ユーザーストーリーマッピングにより、顧客が本当に求めている機能や要件は何かを判断しやすくなります。
ユーザーストーリーを並び替えながら、ユーザーにとって価値のある最小限の機能セット(MVP:Minimum Viable Product)を定義することができ、初回リリースに必要な要件の一覧を洗い出すことに役立ちます。
2.2 顧客の行動・生み出す価値を視覚化する
ユーザーストーリーマッピングは、ユーザーの行動を軸に、サービスやプロダクトが実現したい・実現すべき価値(≒機能)を時系列・優先順位順に視覚的にわかりやすく可視化します。
可視化によりユーザーの行動の想定に漏れがあることに気づいたり、優先順位を並び替えたりすることがしやすくなります。
2.3 開発順序や優先順位を定める
ユーザーストーリーマップを作成することで、提供すべきプロダクトの開発優先順位を定めやすくなります。
顧客や市場の反応を得るために最低限必要なものはなにかという観点で、ユーザーストーリーを1項目ずつ確認しながら優先順位を決めていきましょう。
2.4 プロダクト・プロジェクトの方向性が明確にする
システム開発やソフトウェア開発、サービス開発など、プロダクト開発において最も大切なことは、エンドユーザーに私たちが届けたいプロダクトの価値を感じてもらうことです。
ユーザーストーリーマッピングでユーザーの行動とプロダクトがもたらす価値を視覚的に整理することで、チーム全員がプロダクトの価値を理解でき、プロダクト・プロジェクトの方向性が明確になるでしょう。
3. ユーザーストーリーマッピングの作り方
3.1 ペルソナを設定する
はじめに、ペルソナを設定します。ペルソナとは、製品やサービスを実際に利用する顧客をイメージしたユーザー像のことです。〇〇会社の✕✕部の人、という風に、プロダクトを利用するユーザーがどのような属性なのかを想像でいるようなペルソナを設定します。ペルソナが複数いる場合は、複数洗い出したうえで、ペルソナごとのユーザーストーリーマップを作成します。
より効果的にユーザーストーリーマッピングを進めたい場合は、顧客となるユーザーの性別や年齢、趣味、行動、生活スタイル、思考などを細かく洗い出し、より具体的な人物像の設定をしておくとよいでしょう。
3.2 ユーザーの行動・感情を時系列に並べる
次に、ペルソナとして設定したユーザーの大まかな行動、詳細な行動、そのときの感情などを時系列に書き出して並べていきます。並べていくなかで、粒度の大きいものは詳細化してサブカテゴリを作成すると良いでしょう。
3.3 必要な機能やプロダクトをマッピングする
ユーザーストーリーの整理ができたら、そこに必要な機能やプロダクトをマッピングしていきます。ユーザーの各行動に対してもたらすべきプロダクトの価値や提供したい価値などを、自由に書き出していきましょう。
3.4 開発の優先順位を決める
作成したユーザーストーリーマップを確認しながら、ユーザーにもたらすべき価値をあらためて議論します。
「顧客や市場の反応を得るために最低限必要なものはなにか」という視点で、1項目ずつ採用・見送りを決め、開発の優先順位や初回リリース時点で最低限必要な機能(MVP)を決めましょう。MVPが決まったら、再度ユーザーストーリーと照らし合わせて、過不足がないかを確認します。
3.5 プロジェクトの課題やタスクを整理する
ユーザーストーリーマッピングは、大まかな開発の優先順位やMVPを決めるために有効な手法ですが、詳細な要件定義やタスク設計までをカバーできるものではありません。
ユーザーストーリーマップが完成したら、それをベースに項目ごとにプロダクトバックログ(実施規模、課題、タスクなど)を整理して、改めて開発の優先順位を見直し、優先順位の高いものから要件定義や設計を行っていきます。
4. ユーザーストーリーマッピング専用のツールを使う
ユーザーストーリーを作るために、excelやpowerpointを使う人も多いですが、最初からユーザーストーリー専用のテンプレートがあったほうがやりやすいですよね。excelなどでももちろん作れないことはないですが、自分でフォーマットを作る手間がかかります。効率性という点で考えるなら、専用のツールを使うのが良いでしょう。
4.1 ユーザーストーリーマッピング無料ツールboardmix
以前はExcelで作成することが多かったユーザーストーリーマップですが、最近ではより簡単に作成できる便利なツールがたくさんあります。 特に、離れた場所にいる開発メンバーがオンライン上でコラボレーションしながらストーリーマッピングをする際におすすめのツールがboardamixです。
以下のようにユーザーストーリーに適したテンプレートがあり、利用する際はここに自分が加えたい要素を追加していくだけです。
boardmixにはその他にも多くのテンプレートが存在し、ユーザーストーリーはもちろん、マインドマップのビジネスに利用しやすいテンプレートが多くあります。
まとめ
今回はユーザーストーリーの意味から実際の活用法について紹介してきました。あまり聞きなれない言葉だったかもしれませんが、是非boardmixのようなツールを効果的に利用しながら、ビジネスでユーザーストーリーを取り入れていきましょう。