はじめに
BCG マトリックスの説明
BCGマトリックスは、一般的にPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)とも呼ばれます。それはブランドポートフォリオ、特に市場地位の評価によく使われるビジネスツールです。マトリックスは、製品を分類するための2×2の構造で構成されています。それを定義する主な要素は市場成長率と市場シェアです。
ビジネス戦略における意義
BCGマトリックスを適切に導入すれば、企業が自社の製品やサービスについて意思決定を行う時に利用できる豊かな情報が浮き彫りになりえます。マトリックスを通じて、企業は、どの製品がかなりの収益を生み出しており、ポートフォリオに残す必要があるかを容易に知ることができます。反対に、市場の成長率や市場シェアが目標に達しておらず、それ以上の損失を避けるために売却した方がよい製品も、マトリックスによって明らかになります。
BCGマトリックスの歴史
BGCマトリックスのテンプレートは、長年にわたって変遷を遂げてきましたが、最初に使われたのは1970年代です。それは、BGC(ボストン・コンサルティング・グループ)の創設者であるブルース・ヘンダーソンによって開発されました。同社は、自社のブランドポートフォリオの潜在的かつ戦略的ポジションを評価するために、最初のBCGマトリックスのテンプレートを開発しました。
BCGマトリックスを理解する
マトリックス構造の説明
BCGマトリックスのテンプレートは自分で作ることもできるし、既存のものを無料でダウンロードすることもできます。いずれにせよ、マトリックスの構造は2×2マトリックスの配置に従います。横軸は、市場シェアに基づく製品のパフォーマンスを表します。基本的には、市場シェアの大きさと、特定の市場内での製品のパフォーマンスの強さを表示します。
一方、縦軸は特定の市場における製品の成長率を表します。これは、過去の成長率と、同市場における潜在成長率の両方を反映しています。
四つの象限の説明
2×2のマトリックス構造によって、BCGマトリックスのテンプレートに4つの象限が作成されます。これらの象限には、分析の対象となる製品が含まれます。第一象限には、市場成長率は高いが市場シェアは低い製品が含まれます。第二象限は、市場成長率が高く、市場シェアも高い製品です。第三象限と第四象限はともに市場の成長率が低いが、第三象限は市場シェアが高く、第四象限は市場シェアが低いです。
各象限の特徴
ビジネスでは、第一象限は新発見のように「クエスチョンマーク」として知られています。これらの製品は現在市場シェアは低いが、属する市場の成長率が高いです。これらの製品には将来性がありますが、市場シェアを拡大するためには多くの作業が必要で、通常は大規模な投資を行わなければなりません。市場シェアが拡大すれば、その製品は「スター」となり、それが理想的なシナリオです。そうでなければ、「クエスチョンマーク」のままか、「ドッグ」になってしまうでしょう。
そこで、第二象限に位置する製品を「スター」と呼びます。それは、企業のブランドポートフォリオの中で最もパフォーマンスの高い製品です。急成長する市場で高い市場シェアを持ち、その結果、企業は大きな収益を得ることができます。この競争優位性を維持するためには、製品への莫大な投資も必要です。
次の象限は「キャッシュカウ」です。そのような製品は高い市場シェアを持ち、比較的安定していてあまり成長が見られない市場にあります。つまり、製品はすでにリーダーとして確立されており、追加投資をしなくてもすでに多くの収益を上げています。「キャッシュカウ」から得た収益は、「クエスチョンマーク」と「スター」の象限の製品への資金供給に使われます。
最後は「ドッグ」です。それは、動きの鈍い市場で市場シェアが低い製品です。小規模で安定した収入を生み出すかもしれないが、成長の可能性はあまりないようです。一般的に、この象限に属する製品は、ブランドポートフォリオの他の製品にとって不可欠なものでない限り、他社に売却されるか、製造中止となります。
製品のポジショニングにおける市場成長率と市場シェアの重要性
製品のポジショニングにおいて、考慮すべき要因はいくつかあるが、重要なのは市場の成長率と市場シェアの2つです。製品のポジショニングについて意思決定する前に、その製品が属する市場のシェアと成長率を調査する必要があります。
例えば、市場シェアが低い製品は、そのシェアが大きく伸びるように、ポジショニングしなければなりません。そうすれば、その収益性も高まります。急成長していない市場で大きなシェアを持つ製品については、そのままにしておいてもいいです。現在の位置では、その製品はあなたの会社のためにかなりの利益をもたらしていると同時に、その製品にあまりお金をかけておらず、まさに一石二鳥です。
BCGマトリックスのメリットと限界
BCGマトリックスのテンプレートを使用するメリットはいくつかありますが、最大のメリットは、製品ポートフォリオ全体のパフォーマンスを一目で把握できることです。象限を使えば、販売しているさまざまな製品を比較することができます。どれが儲かっていて、どれが儲かっていないかが簡単にわかるので、それに応じて意思決定ができます。
限界については、どのBCGマトリックスのテンプレートも、製品の成長率と市場シェアしか考慮していません。どちらも非常に重要な要素ですが、それ以外にも影響を与える要素があります。この2つだけに頼らざるを得ない場合、結果として得られるブランドのパフォーマンス評価は、あなたが望むほど正確的で徹底的なものではないかもしれません。
ビジネスにおけるBCGマトリックスの例
アップル社のBCGマトリックスのケーススタディ
製品ポートフォリオの説明
アップル社は世界最大級の電子機器メーカーです。膨大な製品ポートフォリオを持っているが、iPhoneとiPadで最もよく知られています。また、さまざまなソフトウェア・アプリケーションやオンラインサービスも提供しています。
マトリックスにおける製品のポジショニング
アップル社の多様な製品ポートフォリオにより、マトリックスの各象限は簡単に埋めることができます。現在最大の「クエスチョンマーク」はApple TVで、「スター」は間違いなくiPhoneです。MacBook、iMac、そしてApple iTunesはすべて「キャッシュカウ」のエリアに、iPodは「ドッグ」の象限に位置しています。
各象限の分析
Apple TVは、急成長中の市場でありながら、他の多くの強力な競合者に遅れをとっているため、「クエスチョンマーク」となっています。調整次第では、この製品は最終的に「スター」となり、長年「スター」象限を独占してきたiPhoneの仲間入りを果たすことができるでしょう。同社が新型iPhoneを発表するたびに、消費者はこぞってiPhoneを手に入れようとするのは、市場を非常に強力に支配していることを示しています。
「キャッシュカウ」象限では、MacBookとApple iTunesが、長年にわたって同社に安定した収益をもたらし続けています。これらの製品はそれぞれの市場でトップブランドとみなされており、この傾向がすぐに変わる気配はないようです。
最後に、「ドッグ」象限を独占しているのはiPodです。競合他社が市場をしっかりと支配していたため、市場の成長率という点では期待に応えることができませんでした。
出処:images.edrawmax
ユニリーバのBCGマトリックスのケーススタディ
製品ポートフォリオの説明
消費財といえば、ユニリーバはプロクター・アンド・ギャンブルとネスレを僅差で追う世界第3位の企業です。ユニリーバには400以上の大活躍のブランドがあり、190カ国以上のところに販売されています。ユニリーバの最も売れている製品は、石鹸などのパーソナルケア製品です。
マトリックスにおける製品のポジショニング
ユニリーバの洗濯石鹸「ホイール」と浴用石鹸「ライフブイ」は、同社の「クエスチョンマーク」です。これらの製品の市場成長率は高いが、市場シェアは低いです。同社の「スター」は、ラックスのボディソープ、スキンクリームのフェア&ラブリー、粉末飲料のエナジャイル、ハートブランドのアイスクリームです。「キャッシュカウ」の象限に位置するのは、長年のブランドであるサーフ・エクセル、ブルー・バンド、クノール、リプトンです。最後に、シャンプーブランドクリアとファブリックコンディショナーコンフォートがユニリーバBCGマトリックスの「ドッグ」です。
各象限の分析
ユニリーバは、消費財業界第3位の座を維持するために、最終的に「スター」に変えるように「クエスチョンマーク」を位置づけなければなりません。「スター」カテゴリーに属する製品の市場シェアは毎年継続的に伸びており、もたらす収益もますます高くなっています。ユニリーバのトレードマークであるパーソナルケア製品は主な収益源であり、他の象限に資金を供給しています。「ドッグ」の象限に属する製品については、市場シェアが大きく伸びていないため、生産が継続するかどうかは確定していません。
出処:the marketing agenda
ビジネスでBCGマトリックスを使うメリット
戦略計画
BCGマトリックスのテンプレートは、長期的な戦略計画において非常に貴重なツールです。どの製品が最高の市場パフォーマンスを示すかを特定することで、成長と投資の新たな機会を把握するのに役立ちます。
資源配分
BCGマトリックスモデルによって表示される結果を使えば、高い投資収益率を表す製品により多くの資源を割り当て、市場で成長が見られない製品に資源の無駄遣いをすることを避けることができる。
リスク管理
企業は、長期的に見れば採算の合わない製品に労力と資源を費やしすぎることがあります。BCGマトリックスのテンプレートを分析し、ビジネスにとって有益な製品に焦点を当てることで、このリスクを回避することができます。
成長機会の見極め
BCGマトリクスは、作成されて以来、企業が成長機会を見極めるために使用する重要なツールです。このマトリックスを使えば、製品ポートフォリオを俯瞰することができ、最も成長が期待できる分野を簡単に特定することができます。
ビジネスでBCGマトリックスを使う制限
限定のスコープ
BCGマトリックスが考慮するのは、製品の市場シェアと成長率だけです。これらは極めて重要な要素ではあるが、製品を継続すべきか否かを決定する唯一の要素ではありません。
単純なアプローチ
BCGマトリックスのテンプレートは長い間使用されてきたが、特に市場シェアが非常に小さい場合、製品を正確に分類するには単純すぎるとよく言われています。そのような場合は、別の方法がより効果的でしょう。
市場の成長率と市場シェアへの依存
BCGマトリックスのテンプレートの基本構造は、完全に市場シェアと市場の成長率に依存しています。この両面についてもあまり動きがなく、なお他の要因が製品全体のパフォーマンスに継続的に影響を与えている場合、このモデルは正確な結果を出さないかもしれません。
市場予測の制限
BCGマトリックスは、現在の市場動向に依拠しています。ある程度までは、これを用いて将来の市場シナリオを予測することができます。しかし、このモデルは他の潜在的に重要な要素を無視しているため、市場予測を誤る可能性があります。